フランス・ブルターニュ地方の郷土料理
蕎麦粉のガレット
Galettes de blé noir

テト・ドライソーゼージ・山羊チーズのガレット

Galette de Pomme de terre, Saucisson & Chèvre
ポテト・ドライソーゼージ・山羊チーズのガレット

ガレットとは、ブルトン語で『平たくて丸いもの』を意味します。
ブルトン語は、昔からブルターニュ地方に住んでいるケルト系の人々の言葉。アイルランドやスコットランドの古い言葉、ゲール語の同族です。

海に囲まれたブルターニュ半島は、温暖で夏も涼しく冬が穏やか、風光明媚な観光地として人気の地方です。
豊富な海産物と乳製品で有名な美食の地でもあり、神秘的なケルトの伝説や石器時代の遺跡も魅力的です。

しかし雨と霧が多く、土地は瘦せ地で小麦の生産に向かなかったため、古い時代には、住民は貧しく、酪農とともに救荒作物として蕎麦の栽培が盛んになりました。

中世以降、十字軍によってもたらされたとされる蕎麦の実は、ヨーロッパ中で、お粥やパンケーキ、すいとんのようにして食されていました。特に小麦に頼れないブルターニュでは、水で溶いた蕎麦粉を炉端の平たい石の上で薄く焼いたもの、ガレットが長い間パンに代わる庶民の主食だったのです。

その後、ガレットは他の地方へと次第に広まり、蕎麦粉の代わりに小麦粉を使ったクレープも作られるようになり、今では世界中で知られる有名なフランス郷土料理の一つになりました。フランスでは、飲食店としてクレープリー(ガレットとクレープの専門店)の人気は高く、どこの地方に行ってもクレープリーを見つける事ができます。

クレープリーはカジュアルなレストランの一形態として認識されており、ガレット以外にもビストロ的な一品料理、サラダ、デザートなどを、シードルやワインを飲みながら楽しむ事ができます。日本のクレープとはだいぶ違いますが、甘いクレープをメインにコーヒー・紅茶のオーダーで、カフェとして使う事もできます。

ブルターニュ半島01
ブルターニュ半島02

ガレット・レシピ東西比較

レ・スリズィエのガレットは、オート=ブルターニュ(Haute-Bretagne ブルターニュ東部)のガレット・レシピです。

この地方、レンヌ(Rennes)やサン・マロ(Saint-Malo)、モン・サン・ミッシェル(Mont-Saint-Michell)(この有名な観光地は昔からブルターニュとノルマンディの間で取ったり取られたを繰り返した結果、現在はノルマンディーに所属しています)を含むブルターニュの東半分が、オート(高地)=ブルターニュと呼ばれる地方です。

コンプレット

定番中の定番のガレット
Galette Complète ガレット・コンプレット
ガレットは女性名詞なので形容詞も『コンプレット』と女性形になります。「ガレット・コンプレ」だと文法間違いです。

このあたりの人達は、ガレットの生地に小麦粉や牛乳、卵は絶対に入れません。ガレットは当然蕎麦粉100%で、こんがり茶色に焼けていて、薄くて香ばしくパリパリなのが最高で、小麦粉を入れた厚いガレットなんて邪道だと思っています。従って、オート=ブルターニュでは、ガレットは薄ければ薄いほど作り手が上手な証拠だと評価されます。実際、蕎麦粉100%の生地を、破れずに薄く焼き上げるのは簡単ではありません。

一方、バス(低地)=ブルターニュ(Basse-Bretagne ブルターニュ西部)では、通常、生地には牛乳と1〜3割の小麦粉が入り、卵を混ぜ込むレシピも多いです。フライパンでも焼けるという利点もあります。
ブルターニュ西部の町、ブレスト(Brest)やカンペール(Quinper)、ロリアン(Lorient)の人達は、小麦粉や牛乳の入ったリッチでモチモチで厚いガレットの方が好きで、蕎麦粉100%のパリパリした薄いガレットは嫌いだと言います。

このガレット・レシピをめぐる東西対決は、昔から、両者互いに一歩も譲らず続いているのです。

信州蓼科産の蕎麦粉

レ・スリズィエのガレット生地は、蕎麦粉に加えるのは水と塩のみ。

蕎麦粉も水も地元信州蓼科産100%。塩はブルターニュ半島の塩の名産地ゲランドの天日塩を使っています。

地元産の新鮮な野菜や卵と、パリパリとモチモチが同居した蕎麦の香り立つ香ばしい生地をお楽しみください。

コンプレット

Galette de Légumes à la plancha
グリル野菜のガレット(ヴェジタリアン・ガレット)

信州蓼科の山間の集落の蕎麦畑。
高冷地ならではの最高の蕎麦が育ちます。

蕎麦畑01
蕎麦畑02

日本産の蕎麦はフランスの蕎麦と品種が異なり、また蕎麦切り(麺)用に作られているため蕎麦粉の挽き方も細かく、粘りが強く、ガレットにすると、縁がパリパリになるほど薄く焼いても、やや厚い中央部にはモチモチした食感が感じられます。また、輸入品(ほとんど中国・カナダ産)に較べて国産の蕎麦の風味が強く味が良いのは多くの人の認める所です。

蓼科に限らず、八ケ岳西麓産の蕎麦は本当に美味しいです。
蕎麦の原産地は東チベット。標高が高く、昼夜の寒暖の差が大きく、日差しが強烈で、乾燥して、最高気温が低いという八ケ岳西麓の気候は蕎麦にピッタリ向いているのでしょう。
フランス産ガレット用蕎麦粉よりも美味しいと、当店のクレピエCrêpier(クレープ職人)が申しております。

蕎麦だけでなく、水も野菜もジビエも、牛乳も卵もベーコンも美味しい。
良い食材が近くに揃っているという、とても恵まれた環境です。

レ・スリズィエの蕎麦粉100%のガレットのレシピ

《材料》(約30枚分)

粗挽きの蕎麦粉(蕎麦の殻は入れません): 1kg
水: 2.2kg 〜 2.4kg
ゲランドの粗塩: 22g 〜 30g

ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方 ガレットの焼き方

全ての材料を良く混ぜ合わせます。
3°C〜5°Cで、6時間〜6日間寝かせます。(適切な発酵時間は粉・温度等により変わります)

混ぜたばかりの生地は、粘りもなく、破れやすく、焼いても色が薄く美味しそうに見えません。

これを寝かせて発酵させる事で、初めて薄く延ばせるようになります。また、少し酸味が出て、味も濃く、ガレットらしい風味になり、奇麗な茶色の焼き色が着くようになります。

つまりガレットの茶色は発酵させる事で出すもので、粉を挽く時に蕎麦殻を混ぜて黒く見せるのは、その道の権威にいわせると「ほとんど詐欺」だそうです。蕎麦殻を入れても味にとっても食感に対しても何もメリットがなく、単にコスト削減のための粉の嵩増しと、それっぽい色を着けるためだけに入れられるというわけで、それなら確かに「詐欺」と言う意見も分かります。(その点は日本のこだわりの蕎麦屋さんも同じ意見みたいですね。)

発酵させた生地を、ラードを何層にも焼き付けて焦げ付き防止の皮膜を作った丸い鉄板、ビリッグ(billig)に流し、ロゼル(rozell)日本語でトンボと呼ばれる道具、を使って丸く延ばします。

しかし、ご想像通り、これがそう簡単にはいきません。

初心者がちゃんと薄く丸い形に焼けるようになるには、練習に200枚くらいは焼く必要があるとの事です。器用な人だと100枚で済むかもしれないし、不器用な人だと300枚か、もしかして400枚必要かもしれません。

ガレットを丸く延ばしたら、生地の焼け加減を見ながら焦げ易い端っこの方をスパチュラで鉄板から剥がして折りたたみます。

ビリッグの温度は230°C。焼く時間にして1分から1分30秒くらい。これも生地の状態で変わります。卵を載せて焼いたり、チーズを載せて融かしたする場合、そうした具材の焼け具合も見ながら焼き時間を調節します。

全てが十分に焼けたら、スパチュラ一本で一息に引っぱり、お皿の上に着地させます。これもまた、訓練が必要な動作です。

仕上げに、有塩の融かしバターを刷毛でたっぷり塗ります。この塩バターの風味が、香ばしく焼けた蕎麦の香りと相まって食欲をそそります。

写真では、素焼きのガレットをひっくり返して裏面も焼いています。(普段お店で出すガレットではやりません)

この、蕎麦粉100%のガレット表面の、焼く過程でブツブツと出てくる泡が作るレース編みの様な模様は、その泡の荒さ細かさが粉の種類や生地の発酵具合でガラッと変わってしまいます。泡が大きい方が良いという事は特にないそうですが、大きめの泡模様があった方が美味しそうに見えますね。

蕎麦粉100%のガレットは、トンボを使って延ばさないと延びないため、フライパンに流しただけでは薄く焼く事ができません。クレープ用の薄いフライパンでも無理です。(粉に対して水を大量に入れれば延びは良くなりますが、破れ易く取り扱い困難で、しかも味や食感も劣るため、全くお薦め出来ません。無理せず小麦粉と牛乳を入れた方がいいでしょう。)

従って、自宅にビリッグを据え付けて、焼く練習を重ねる本格派の人以外は、蕎麦粉100%のガレットを食べるには、クレープリーCrêperie(ガレットとクレープの専門店)でクレピエCrêpier(クレープ職人)に焼いてもらうしかないという事になり、ブルターニュではどこのクレープリーも大変繁盛しています。ガレットはブルターニュの人々にとって欠かせない食べ物ですから。

毎日食べないにしても、休日や、ちょっと楽しい食事の時には必ずと言っていいほどガレットだそうです。一人で5枚も食べる人もいるとか。

素焼きのガレットは、スーパーマーケットでもパックされて売っているほか、近所のクレープリーに注文して焼いてもらい、自宅のプライパンで具を載せて焼き直して食べる事も一般的です。

しかしどうしたって焼きたてのガレットには敵いません。

日本でも、最近続々とガレットの店が増えています。特に東京はレベルが高い店が多いです(お客さんのレベルが高いですからね)。ブルターニュに引けを取りません。
ぜひ、一度どこかで本物の美味しいガレットを試してみて下さい。

そして、信州にお越しの際には、当店レ・スリズィエもよろしくお願いします。

(参考)フライパンで作れる、小麦粉入りの蕎麦粉のガレットのレシピ

ベルトランの通ったクレープ職人養成専門学校、Ecole Maître Crêpierによる小麦粉入り蕎麦粉のガレットの代表的なレシピ。
小麦粉入りであってもクレープリーではビリッグとトンボで薄く焼くのですが、それらがない場合フライパンに流して焼く事もできます。

《材料》(約30枚分)

蕎麦粉: 700g
小麦粉: 300g
卵: 1〜2個
水: 1.4 〜1.6kg
牛乳: 1.2kg
粗い結晶塩: ひとつかみ(約25g)

(作り方は簡単に) 全ての材料を良く混ぜ合わせる。
3°C〜5°Cで、6時間〜一晩寝かせる。
フライパンを熱し、有塩バターを一切れ融かす。
生地をフライパンに流す。
フライパンを回して生地を薄く広げる。
卵やチーズなどガレットの上で加熱する食材はこの時点で載せる。
焼き上がったらフライ返しなどで剥がしてお皿に取る。

トンボを使わないでフライパンで焼く以上、どうしても分厚くなりますが、このやり方で、バス=ブルターニュ風モチモチのガレットが作れます。
皆で焼きながら食べる、ガレット・パーティはとても楽しいのでお勧めです。挑戦してみて下さい。